「契約不適合責任」不動産売却時に気をつけたいこと

2023-05-18



2020年4月1日から民法の改正による不動産売買契約における瑕疵担保責任が契約不適合責任へと変わったことにより、買主にとっては請求可能な権利の選択肢が増え、請求できる損害の範囲が拡張され、権利行使期間が軽減されるなどしました。
一方売主にとっては責任が重くなる内容となったためにデメリットであるとも考えられます。
売主にとってどのような影響が生じ、どのような対策を講じればよいのか解説します。

まず民法改正前に規定されていた瑕疵担保責任とは「傷」「不具合」「欠陥」のことを言い、雨漏りやシロアリの被害、設備の不具合・建物構造上重要な部位の木部の腐食・土地境界線の未確定・土壌汚染や地下埋設物などのことをいいます。

[瑕疵担保責任]
瑕疵担保責任とは、購入した物件に欠陥があることにより家に住めないなど買主が物件を購入した目的が達成できない場合に売主に生じる責任のことです。
改正前の民法では、売買契約後に発覚した物件に隠れたる瑕疵がある場合に、買主は売主に対して損害賠償請求ができるとしていました。
隠れたる瑕疵とは買主が契約時に普通に注意しても分からなかった欠陥のことをさし、買主がその欠陥に対して善意無過失でなければ適用されませんでした。

契約不適合責任
契約不適合責任とは引渡されたものが契約の目的に適合しないときに売主に発生する義務です。
新法では売主が契約に合った物を引き渡さなければなりません。(売主の債務)。
契約に合っていない物を引き渡した場合には売主に故意過失などの原因があれば損害賠償請求できるとしています。

買主の権利として4つの権利が明文化されました。

①追完請求=契約通りの履行を求める権利
引き渡された物の種類や品質、数量などが契約内容に適合しないときに、買主が売主へ目的物の修補や代替物、不足分を要求できる権利

民法改正後は契約不適合があると先ずは追完請求を行うべきと規定されています。

②代金減額請求=減額を求める権利
引渡された目的物が契約目的に適合しないときに買主が売主へ売買代金の減額を求める権利です。
追完請求を行っても売主が応じない場合に代金減額請求ができます。

③契約解除=契約を解除する権利
契約目的に適合しない物を納品されたとき買主は契約を解除できます。
売主へ催告してから解除するのが原則ですが、履行不能な場合や履行を拒否されている場合などには催告なしで解除が可能です。

④損害賠償=損害賠償を求める権利
売主に故意や過失があって買主に損害が発生した場合、買主は売主へ損害賠償請求ができます。





瑕疵担保責任と契約不責任の違い

隠れたる瑕疵でなくても請求できる
旧法の瑕疵担保責任は隠れたる瑕疵(買主が瑕疵について善意無過失)でなければ請求できませんでした。
契約不適合責任においては欠陥が隠れている必要はありません。
買主が善意無過失でなくても(欠陥を知っていたり不注意で知らなかったりしても)売主へ責任追及できます。

*請求できる権利の拡充
瑕疵担保責任では買主は損害賠償請求か解除しかできず、解除できるのは契約目的を達成できないときに限定されていました。
契約不適合責任では買主に修補請求権や代金減額請求権も認められます。
また、契約目的を達成できるかどうかにかかわらず債務不履行があれば解除が可能です。

*損害賠償における過失の要否
瑕疵担保責任では売主が善意無過失であっても買主からの損害賠償請求が可能でした。
契約不適合責任では売主に故意過失がなければ損害賠償請求はできません。

*損害賠償の範囲
瑕疵担保責任では点検費用や鍵を変えた費用など、契約が有効と信じたために発生した損害しか請求できませんでした。
契約不適合責任では転売していれば得られたであろう利益など、履行利益まで請求できるようになりました。

*請求期限の違い
瑕疵担保責任の場合、買主は瑕疵を知った時から1年以内に明確に権利行使(責任追及の請求をする旨の意思表示)をする必要がありましたが、契約不適合責任では欠陥( 不適合)を知った時から1年以内に相手に不適合である旨を通知した場合には、その後になってから責任追及の具体的請求をすることも可能とされました。
但し、その責任追及の権利更新ついては不適合を知った時から5年または引渡しの時から10年までの間にしない場合消滅時効にかかります。
売主が欠陥について悪意や重過失がある場合は期間制限は適用されません。


契約不適合責任は短縮・免除できる
契約不適合責任は当事者が納得すれば変更できます。(双方の合意により排除可能な規定)
つまり契約ごとに特約でもって買主の行使する権利を限定的にしたり、売主の責任が及ぶ範囲を狭くしたりすることでこの規定を排除ないし免責にすることが可能です。
但し、売主が知りながら買主に告げなかった契約不適合については特約の対象外となります。
契約不適合責任を問われないためにも知っている事実についてはなるべく事前に伝え、売主買主双方のもと契約を結ぶことが必要です。

当事者が合意すると契約不適合責任について以下のような修正が可能です。

・修補請求しなくても代金減額請求できる
・代金減額請求はできないものとする
・契約不適合責任が発生しないものとする(免除)
・契約不適合責任の通知期間を短縮する

中古物件の個人間売買では、売主の契約不適合責任を免除するケースも少なくありません。

売主が気をつけたいこと
契約不適合責任へと変わったことにより、買主の権利が拡充され相対的に売主の責任の及ぶ範囲が広くなったと言えます。
売買契約後に契約不適合責任を問われないため売主として以下の点に注意が必要です。

*把握している欠陥を必ず不動産仲介会社や相手に告げる
売主が物件の欠陥を知っているにも関わらず相手に告げなければ、引渡し後に契約不適合責任を問われるリスクが高まります。
白アリ、傷、雨漏り、過去に物件内で発生した事故や事件の内容など、把握している問題点はすべて不動産仲介会社を通じて買主へ告げましょう。

*特約で契約不適合責任を限定する
契約不適合責任は特約によって免除や期間制限ができます。
制限は残すとしても期間を短縮するなどしてもらいましょう。

*瑕疵保険へ加入する
万一欠陥が発覚した場合に備えて瑕疵保険へ加入しておくと損害賠償金などが補填されるので安心です。


契約不適合責任では、中古物件の売買による責任期間は契約不適合を知った日から1年以内に通知し、5年以内かつ引渡しから10年以内に損害賠償等の権利行使が可能です。
売主が負担する責任が瑕疵担保責任よりも大きくなり、損害倍書請求、契約解除の他追完請求、代金減額請求が可能となりました。
契約不適合責任を負わないようにするためには、売主は契約前にホームインスペクションを行う、瑕疵担保保険に加入するなどの対策が有効です。
自分でも気づいていない不具合がないか明確にしておきます。
また、契約書の作成にあたり特約による免責事項を設けるなど不動産仲介会社と相談してください。



ブログ一覧ページへもどる

まずはご相談ください!

0267-31-5363

営業時間
10:00~18:00
定休日

売却査定

お問い合わせ