空き家を売却する際に押さえたいポイントを解説

2023-06-09



実家やマイホーム、別荘などの空き家を相続したがいずれ手放さなくてはと思いながら、どう処分すれば良いかわからずそのまま放置している人も多くいると思います。
空き家は古い物件が多いためどのように売却すれば良いのか、また買い手は見つかるのかと悩むケースもあります。
空き家を売却する前にある程度の知識をつけ、失敗しないようにするために売却の流れと押さえておきたいポイントを解説します。


空き家を放置したまま所有し続けることは、デメリットしかありません。

放置している空き家がある場合、どのように対処するのか早めに決めましょう。
空き家の活用方法として3つのポイントがあります。
売却する
賃貸に出す
解体する

空き家を放置しておくことによりさまざまなリスクが生じます。
特定空き家に指定されると行政代執行で強制的に解体される恐れがあり、解体した費用は所有者に請求されることになります。
売却するつもりがあるなら放置せず、資産価値が下がる前に売却することをおすすめします。

≡空き家を放置して生じるリスク≡


・固定資産税や維持費がかかる
・防犯面や衛生面で不安がある
・特定空き家になり行政処分を受ける恐れがある
・経年劣化と共に資産価値が下がる

◆固定資産税や管理・維持費がかかる
空き家であっても不動産を所有している限り、毎年1月1日時点での所有者に対して固定資産税が課せられます。
また、空き家を適切に管理するためには定期的に空気を入れ替えたり清掃をしたりしなければならず、庭がある場合には草刈りや植栽の剪定などもしなければなりません。
これらの管理を自分でする場合は交通費や手間がかかるだけですが、業者に依頼するとなるとそれなりの費用が必要となります。
毎年の固定資産税に加え、維持管理費用が積み重なるとかなりの金額になってしまいますので、出費を抑えるためにも使っていない空き家は放置しないことをおすすめします。




◆防犯面や衛生面で不安がある
適切な管理や清掃を怠ると雑草がはびこり、害虫や害獣が住みついてしまうことにもなります。
それにより臭いが発生したり、隣家や周囲に迷惑が及ぶこともあります。
また、不審者が侵入したり犯罪に使われたりするなど防犯面においても心配です。
空き家で問題が生じた場合は所有者の責任となってしまいますので、防犯面や衛生面での不安を払拭するためにも空き家の放置は避けるべきです。

◆特定空き家になる恐れがある
特定空き家とは、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」により、次のいずれかに該当する空き家のことです。
倒壊などの危険がある状態
著しく衛生上に問題がある状態
著しく景観を損なっている状態
放置することが不適切である状態

特定空き家になると宅地に適用されている住宅用地の軽減措置が適用されなくなるため、固定資産税額が上がってしまいます。
さらに行政から指導や勧告を受けても改善が見られない場合は、行政代執行により強制的に建物を解体されることもあります。
強制的に解体された場合の費用は所有者に請求されます。
古い空き家を放置している場合は特定空き家に指定される可能性が高くなるため、早めに対処することをおすすめします。



◆経年劣化と共に資産価値がどんどん下がる
空き家であっても築年数が経てば経つほど資産価値が下がっていきます。
そのためいざ売ろうとしたときに思っていた以上に安くなってしまうことがあるため注意が必要です。
いずれ売るつもりだけど今すぐ売るのは面倒などと放置していると資産価値はどんどん下がるばかりでなく、固定資産税や維持管理費がかかるため、結果として損をしてしまうことになりかねません。
売却する予定があるならば、なるべく放置期間を短くしてできるだけ早めに売却するほうが良いでしょう。

≡空き家を売却するメリット≡

*維持費の負担がなくなる
固定資産税や管理費等の維持費がなくなります。

*管理の負担が減る
空き家は保有している以上換気や通水等を定期的に行わないと建物の劣化が進むため、建物の価値を維持するには定期的な管理が必要となりますが、売却してしまえば管理の費用や手間がなくなります。

*近隣への迷惑がなくなる
空き家を放置すると害虫の発生、不法投棄などによる生活環境の悪化など近隣への迷惑が生じる可能性があります。
まだ苦情や迷惑が生じていない場合でも建物の倒壊や火災など大きなトラブルにつながる場合もあります。

≡空き家を売却する方法≡

そのままの状態で売却する
空き家の売却方法で最もおすすめの方法は、そのままの状態で売却するという方法です。
そのままの状態で売却すれば取り壊し費用やリフォーム費用などを負担する必要がありません。
そのまま売る場合のポイントとしては、高く売却してくれる不動産会社を見つけることです。
査定額は不動産会社により大きく異なる場合があるのでできるだけ多くの不動産会社の査定を受け、各社の査定額をしっかり比較して、できるだけ高く売却してくれそうな不動産会社に依頼するようにしましょう。

*取り壊してから売却する
建物は古くても利用価値のあるものであれば取り壊しは不要ですが、買主が購入後住めないような建物は売主側で取り壊した方が売りやすくなります。



*買取を利用する
買取とは転売を目的とした不動産会社へ売却することです。
不動産会社は転売益を確保するため市場の価格より3~4割程度安く購入するため、売却価格は通常の売却よりも安くなってしまいますが、取り壊しが必要な建物であっても取り壊し費用が捻出できないような場合には買取を選択する価値はあります。
取り壊しが必要な建物は立地が良い物件でない場合、買主側で取り壊し費用を負担してまで購入するような個人の買主は少ないため、買取を行っている不動産会社に対してなら建物を壊さずに売却することは可能です。
また通常で売却するよりも、買取会社ならすぐに買い取ってくれるので売却の手間が省けます。
維持費の負担等から解放されるメリットを考えれば安くても買取を検討する価値はあります。

*空き家バンクを利用する
空き家バンクとは自治体が行っている売却の情報サイトです。
空き家バンクを利用するメリットとしては、不動産会社が取り扱ってくれないような物件でも売り物件として掲載できるという点です。
家財道具が残ったままの物件なども載せることができるので、空き家を倉庫として使っているがなかなか片付けることができないような場合は空き家バンクを利用してみる価値はあります。


≡売却の流れ≡


手入れが行き届いていて傷みがそれほどひどくなければそのまま売却という方法があります。
将来的に利用予定がない場合は思い切って売却することをおすすめします。

1.価格査定
先ず最初に価格査定を行います。
査定とは3ケ月程度で売却できるとされる価格を出すことです。
査定価格は不動産会社によって変わるので、高く売却するためには複数の不動産会社に査定を依頼し、高く売却してくれそうな不動産会社を探すことがポイントです。

2.媒介契約の締結
媒介契約とは不動産会社に仲介を依頼する契約のことです。
媒介契約には3種類あります。

・専属専任媒介契約
自分で買い手を見つけても不動産会社を介さずに売却することはできません。
1社のみに任せるのでその会社の力量次第で売却の時期と金額が左右されます。
不動産会社からの報告頻度が1週間に1回以上と最も高い媒介契約なので、販売状況が把握しやすい点がメリットです。
広告費用をかけて積極的に販売活動をしてもらえることもあります。

・専任媒介契約
自分で買主を見つけることも可能です。
専属専任媒介契約と同じく1社のみに任せるので、その会社の力量次第で売却の時期と金額が左右されます。
広告費用をかけるなど積極的な販売活動を行ってもらいやすく、不動産会社からの報告頻度は2週間に1度以上と高く設定されているので、販売状況が把握しやすいというメリットがあります。

・一般媒介契約
複数の不動産会に仲介を依頼できるので買い手の幅が広がりますが、販売状況の報告義務がないため活動状況が分かりづらいというデメリットがあります。

売却を依頼する不動産会社が決まったら媒介契約を締結します。

3.売却活動の開始
中古住宅の場合売却活動を開始してから売買契約を締結するまで3ケ月程度かかることが一般的ですが、古い空き家などを売却する場合には3ケ月以上売却期間がかかることもありますので、空き家を売却する場合はスケジュールに余裕をもって取り組むことがポイントです。

4.売買契約の締結
買主が見つかったら売買契約を締結します。
売買契約締結時には買主から手付金を受取ります。
手付金の相場は売買代金の10%となり、手付金はそのまま売却代金の一部に充当されます。

5.引渡し
売買契約から引渡しまで1~2ケ月程度かかります。
引渡し時には残代金を受領します。
売主から所有権移転に必要な書類や鍵を渡して終了となります。

空き家の売却は基本的に通常の不動産売却と変わりません。
空き家の場合は不動産会社に鍵を預けておけば内見対応をしなくて良いので、信頼できる不動産会社に売却できるまで管理とあわせて一任しておくと良いでしょう。
仲介で売却する場合、売却するまでたいてい時間がかかります。
すぐに売却したい場合は不動産会社に直接買い取ってもらうのがおすすめです。
買取りの場合、すぐに現金化できるため手間や時間がかかりませんが、仲介での売却よりも3割~4割程度安くなってしまうデメリットがあります。
空き家を少しでも高く売却したい場合は仲介での売却、すぐに現金化したい場合は買取りを選ぶと良いでしょう。
空き家を売却すれば売却代金が手に入るだけでなく、固定資産税や維持管理費用がかからなくなります。
また、清掃や管理を続ける手間もかからなくなります。


≡空き家売却の税金について≡


*相続した空き家の売却で適用できる税金の特例や控除は期限があるため早めに行動することが大切です。
*相続は専門性が高い分野のため、相続に強い不動産会社に相談することをおすすめします。
*空き家の売却をする際は、空き家の近くにある不動産会社に売却を依頼することをおすすめします。

◆相続した空き家を売却して利益を得た場合は、通常の不動産売却で得た場合と同様に譲渡所得税を納めなければなりません。
しかし、相続した空き家を一定期間内に売却した場合は、相続税や譲渡所得税の特例や控除を受けられます。
いずれ売却するのであれば適用できる期間内に売却することをおすすめします。

◆相続した空き家を売却する際、控除や特例が適用できます。
*取得費加算の特例
相続した不動産を一定期間内(相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで)に売却するなどの要件を満たせば、相続税とし納めた額の一部を取得費として計上できる特例です。

*空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続して売却した不動産が住まいとして使われていた場合、そこに住まなくなってから3年が経過する年の12月末までに売却するなどの要件を満たせば、譲渡所得額から最高3000万円まで控除できるという特例です。

これらの特例は適用できる期限が決まっているため、早めに行動を起こすことが大切です。
空き家を相続していつまでに売るべきか、何をしておけばよいのか、なるべく税金がかからないように売りたいなど、わからないことや相談したいことがある場合には相続物件の売却に強い不動産会社に依頼するのがおすすめです。




≡空き家を売却する際の注意点≡

1.建物を取り壊す判断は査定を依頼してから行う
空き家を取り壊すべきかどうかの判断は査定を依頼してから行うようにしてください。
古い空き家であっても取り壊さずに売却できる場合もあるので、自分で判断せずに不動産会社の意見を聞いてから判断するようにしましょう。
取り壊し費用は木造の場合おおよそ5~6万円程度ですが、近年の価格の高騰によりそれ以上となる可能性もあります。
建物の延床面積が35坪前後とした場合、取り壊し費用が200万円程度かかってしまうため、壊さなくても良い建物を壊してしまうと大きな金額が無駄となってしますこともあります。
できるだけ多くの不動産会社に査定依頼をして建物の取り壊しの判断についても相談するようにしてください。

2.家財道具は撤去してから売却する
不動産会社によっては、家財道具が残っている物件はすぐに売れる物件でないと判断する場合もあるので、できるだけ高く売却するためには家財道具の撤去から始めるようにしましょう。

3.取り壊しは1月1日以降に行なう
建物を取り壊して売却する場合は、取り壊しは年末に行なわず、翌年の1月1日以降に行なうと良いでしょう。
空き家でも住宅が建っていると住宅用地の軽減が適用され土地の固定資産税が安くなります。
土地の上に住宅が建っているという基準は1月1日の状態で判断されるので、1月1日の時点で建物が残っているとその年は1年間住宅用地の軽減が適用されます。
1月1日以降に取り壊し、その年の12月31日までに売却すれば土地の固定資産税を安くしたまま売却できます。
取り壊しが必要と判断された建物はタイミングを見計らって売却することをおすすめします。


≡空き家を売却に出したがなかなか売れない場合の対処法≡


*売却価格を下げる
*不動産会社を変更する
*買取りを利用するなどの方法があります。

地方や田舎にある空き家の場合価格を下げてもなかなか売れない場合があります。
そのような場合は不動産会社を変更するか、買取りの利用を検討してみて下さい。
空き家が所在している地域に密着した不動産会社であれば近隣で買い手を探したり、購入を持ちかけたりできる場合があります。





≡まとめ≡


*使っていない空き家を放置すると防犯面や衛生面で近隣の家に迷惑をかけることがあり、さらに経年劣化と共に資産価値が下がり所有している期間の固定資産税や維持管理費用もかかるため、利用予定がなければ早めに売却することをおすすめします。

*相続した空き家の場合、節税できる特例や控除を適用するためには、一定期間内に売却しなければならないため早めに行動するようにしましょう。

*空き家が遠方にある場合は、空き家の近くにある不動産会社に売却を依頼することをおすすめします。

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