媒介契約は宅地建物取引業法(宅建業法)34の2に詳細が規定されていて、契約締結時には法律に定められた一定の事項が記載された書面(媒介契約書)に宅建業者記名押印のうえ、依頼者に交付する必要があります。
契約の種類ごとに標準的な契約内容が決まっていて、専属専任媒介>専任媒介>一般媒介という順で締結した不動産会社は依頼者への販売状況の報告義務などの制約が大きくなっていきます。
媒介契約自体は口頭のみでの約束でも成立しますが、契約関係と内容を明らかにすることによりトラブルを防ぐために、不動産会社は売主に対して媒介契約書の交付をすることを義務付けられています。
3種類の媒介契約の特徴
■専属専任媒介契約
複数の不動産会社との契約はできず、一社の不動産会社のみに任せる契約であり、売主が自分で買主を見つけて売買することも制限されます。
専属専任媒介契約の期間中は、契約した不動産会社の紹介した買主としか売買契約を結ぶことはできません。
・複数社との同時契約不可
・契約の有効期間:3ケ月以内(自動更新なし)
・契約期間内の解除:制限有り
・レインズへの登録義務:有り → 契約日の翌日から5営業日以内
・業務状況の報告義務:有り → 1週間に1回以上、文書またはメールで行う
専属専任媒介契約は売主側に強い制限がかけられる一方、不動産会社側に課せられる義務が最も厳しい契約です。
契約の翌日から5営業日以内にレインズに物件情報を登録することが義務付けられているため、迅速に情報を公開してもらえます。
〈レインズとは〉
不動産取引のためのネットワークシステムです。
レインズに登録された物件情報はネットワーク上に公開され、全国の不動産会社が検索することが可能です。
営業活動の状況も1週間に1回以上売主に報告するよう義務付けらています。
[報告内容の例]
・営業活動の内容
・物件の問合せ件数
・内覧の希望件数
・内覧の手応えや反応
契約の有効期間は3ケ月以内という規定があります。
3ケ月の間に成約しないまま契約期間が終了した場合は、媒介契約を更新するか別の不動産会社と契約を結び直すかを売主が判断します。
契約期間中の途中で契約を解除する場合は、不動産会社に契約不履行が認められる場合のみ可能です。
売主側の都合で契約を解除する場合は、それまでの営業活動にかかった実費を違約金として請求されるこもとあります。
■専任媒介契約
専任媒介契約も複数の不動産会社との契約はできず、一社の不動産会社のみに任せる契約ですが売主が自分で買主を見つけることは可能です。
・複数社との同時契約不可
・契約の有効期間:3ケ月以内(自動更新なし)
・契約期間内の解除:制限有り
・レインズへの登録義務:有り → 契約日の翌日から7営業日以内
・業務状況の報告義務:有り → 2週間に1回以上、文書またはメールで行う
専属専任媒介契約と比べ売主側の制限や不動産会社側の義務がやや緩いものとなり、媒介契約締結から7営業日以内にレインズに物件情報を登録することと、営業活動の状況報告は2週間に1回以上することが義務付けられています。
契約期間は専属専任媒介契約と同じく最長3ケ月となり、契約期間中の途中で解除する場合も専属専任媒介契約と同様不動産会社側に不履行が認められる場合のみ可能となり、売主側の都合で契約を解除する場合は、それまでの営業活動にかかった実費を違約金として請求されるこがとあります。
■一般媒介契約
一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約であり、契約する不動産会社の数に制限はありません。
また、売主が自分で買主を見つけることが可能ですので、売主にとって最も自由度の高い契約形態です。
・・複数社との同時契約可
・契約の有効期間:規定なし
・契約期間内の解除:いつでも解除可能
・レインズへの登録義務:有り → 無し(任意で登録)
・業務状況の報告義務:有り → 無し(任意で登録)
他の契約形態とは異なり契約する不動産会社にレインズへの登録義務や活動状況の報告義務はありませんが、義務が課されていないだけであるので、レインズへの登録や活動報告を送ってもらうよう依頼することは可能です。
契約期間は特に規定がなく、一般的には3ケ月単位で契約する不動産会社が多く、契約期間が終了したら自動的に更新するように取り決めることもできます。
契約途中の解除はいつでも可能です。
一般媒介契約から専任媒介契約や専属専任媒介契約へ切り替えることもできますが、その場合他の不動産会社との契約は解除する必要があります。
一般媒介契約には明示型と非明示型の2種類の形態があります。
▪明示型:他にどの不動産会社と契約しているかを通知する
▪非明示型:他に契約している不動産会社があっても通知しなくてよい
どちらの形式で一般媒介契約を結ぶのかは不動産会社によって異なるため、契約前に確認しておくとよいでしょう。
一般媒介契約の場合、同時に契約できる不動産会社の数に制限はないため何社とでも契約することは可能ですが、契約する会社が増えるほどやり取りの手間が増えることになるので、3~4社と契約するのがおすすめです。
契約した不動産会社のうちの1社でもレインズに物件登録をしてもらえれば、買主側の不動産会社がレインズの検索で見つけることができます。
一般媒介契約の場合は、大手の不動産会社と地元の不動産会社と契約することによりそれぞれの強みを活かして売却活動をしてもらえます。
一般媒介契約を結ぶ場合には、レインズに物件を登録してもらえるかどうかも予め確認しておきましょう。
また、一般媒介契約の場合、不動産会社側にレインズ登録に関する義務はありませんが、登録を依頼することはできますのでレインズ登録について承諾をもらえらたら媒介契約書にも記載しておいてもらいましょう。
物件がレインズに登録されるとレインズから登録証明書が発行されます。
レインズへの登録を証明する書類ですので、登録を依頼した場合は必ず不動産会社から受け取るようにしてください。
[メリット]
*物件の売却活動を積極的に行ってもらえる
*活動報告の頻度が高いので、不動産会社と密に連絡を取り合いながら売却を進めることができる
[デメリット]
*契約した不動産会社に囲い込みをされるリスクがある
〈囲い込みとは〉
不動産会社が他社からの申し込みを断ったり、正しく情報を公開しないことにより買主の候補者を自社の顧客に限定する行為のことをいいます。
*売却力があまりない不動産会社に依頼した場合には売却期間が長引いてしまうこともあります。
専任媒介契約のメリット・デメリット
[メリット]
*物件の売却活動を積極的に行ってもらえる
*活動報告が2週間に1度受けられるので売却活動の状況を把握しやすい
*自分で買主を見つけることができるので、知り合いに売却することが可能
[デメリット]
*専属専任媒介契約と同様契約した不動産会社に囲い込みをされるリスクがある
*売却力があまりない不動産会社に依頼した場合には売却期間が長引いてしまうことがある
一般媒介契約のメリット・デメリット
[メリット]
*人気物件の場合は、不動産会社同士が競合して早く・高く売却できる可能性がある。
*高く売れそうな物件は、コストをかけたりして早めに売却できるよう高いモチベーションで売却活動に臨んでもらえる
[デメリット]
*物件によっては広告費をかけても他社で成約してしまった場合無駄になるので、売却活動に力を入れてもらえないことがある
*活動状況を把握するために売主が積極的に働きかける必要がある
*売主に向けてのサポートが他の契約に比べて薄いため、売却の方針も自分で判断しなければならない場合もある
※不動産売却にあまり自信がない人にとっては難易度の高い契約形態といえます。
仲介手数料の金額・支払うタイミング
仲介手数料は売買取引を成約させた不動産会社に支払う成功報酬です。
媒介契約の種類によって不動産会社に支払う仲介手数料の金額が変わることはありません。
仲介手数料の金額は法律で定められた手数料率を上限に不動産会社が定めることになっています。
仲介手数料の金額と支払うタイミングは媒介契約書に記載してありますので事前に確認しておきましょう。
違約金が発生する場合
専属専任媒介契約や専任媒介契約の場合、他社から紹介された買主と売買契約を結んでしまうと、元々契約していた不動産会社に対して違約金を支払うことになります。
違約金は媒介契約書に規定されている報酬額となり、仲介手数料相当額の金額となります。
不動産会社を乗り換えたい場合は、契約期間の満了を待ってから新たに媒介契約を結ぶようにしましょう。
媒介契約を結ぶ上での注意点
*媒介契約の内容をよく確認する。
どの契約形態で媒介契約を締結する場合でも、媒介契約書に署名捺印する前に書面に書かれている内容をよく確認しましょう。
〈チェックポイント〉
・媒介契約の種類
・レインズは何日以内に登録することになっているか
・業務報告の頻度
・業務報告は文書またはメールのどちらで行われるか
・契約の有効期間
・報酬額の金額
・報酬を支払うタイミング
・売主側に違約金が発生する場合の条件
・契約が解除できる条件
専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3種類の契約形態があり、それぞれのメリットとデメリットを把握したうえで、売主としてまた物件の状況に適した契約を結ぶようにしましょう。