不動産売却時のインスペクション メリットや注意点について解説します。

2023-10-23





売主・買主の双方が住宅の状態についてマイナスな事項を把握したうえで安心して取引ができることがメリットといえるホームインスペクションについて、特徴や注意点を解説します。
取引金額が大きく住宅ローンを利用して購入することが多い中古住宅ですので、売買の前に専門家に診断してもらうことでスムーズな売買につながります。


ホームインスペクションとは


ホームインスペクションとは、住宅の設計・施工に詳しい建築士や住宅診断士などの専門家が住宅の劣化状況や工事の不備など現在の状態について調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所・補修時期などを客観的に位診断するもので、住宅診断や建物検査ともいわれています。
専門家とは、日本ホームインスクターズ協会が条件を満たす個人に対して付与する民間の資格を取得している人のことを指します。
日本ホームインスペクターズ協会によると、ホームインスペクションと呼んでいるのは消費者が中古住宅を売買する前に、主に目視で住宅のコンディションを把握して報告するという業務のことをいい、比較的短時間で可能な範囲で行う一次診断になります。
外壁や基礎に不具合の兆候は見られないか、室内に雨漏りの形跡はないかなどを目視で確認したのち、診断依頼者に説明します。
ホームインスペクションではわからない項目で懸念があるものは、二次診断の可能性を診断依頼者に説明します。
ホームインスペクションは家の良し悪しに関わらず診断してもらうことが可能です。
売買の前に専門家に診断してもらっておくことでスムーズな売買につながります。
近年では、中古物件の売買を行うにあたり事前に家の状態をよく確認しておいてから売買しようという消費者が増えてきたため、専門家に家の状態を診断・調査してもらうことが一般的になってきました。
専門家に依頼すると下記のような住宅の状態を診断してもらうことができます。

・あと何年くらい住み続けることができるのか
・いつ頃・どのあたりの回収が必要となり、その費用はどのくらいかかるのか
・欠陥住宅ではないか


中古住宅のインスペクションの説明が義務化


宅地建物取引業法が2018年4月に改正されたことにより、ホームインスペクション(建物状況調査)の説明が義務化されました。
この改正により不動産会社は中古住宅の売買を仲介する際に、インスペクションについて売主や買主に説明する義務を負うことになりました。
家を売却しようと考えている人は、必ず不動産会社からホームインスペクションについて説明を受けることになり、ホームインスペクションが行われた場合、不動産会社から買主への実施内容の説明が義務化されています。

[この法律により不動産会社に義務付けられるもの]
■媒介契約を結ぶとき
不動産会社は、まず売主や買主に対してインスペクションについて説明し、依頼者の希望があればインスペクション業者をあっせんします。

■重要事項説明のとき
インスペクションをすでに行っていた場合、不動産業者はその結果を買主に対して説明しなければなりません。

■売買契約のとき
中古物件が正式に売買されると決まったときは、売主と買主の双方が基礎部分や外壁などの現況について確認し、その内容を不動産会社が書面にした上で双方に交付します。


売却前にホームインスペクションをするメリット


1.家の欠陥を予め確認できる
家を売る前にホームインスペクションを行うことで修理・補修が必要な場所をあらかじめ知ることができます。
先に修理などをおこなっておけば買い手にも好印象を与えることができます。
家の売買が早く決まるということは家の状態がいい状態で売れるということなので、結果的に家が高く売却できることにもつながります。

2.買主が安心して中古物件を購入できる
専門家による住宅の状態の診断を踏まえたうえであと何年くらい住めるのか、いつ頃改修が必要となるのかが判断しやすくなります。
買主が購入と同時に改修が必要となる場合でもその費用負担を予め考慮しておくことができれば、資金計画が立てやすくなります。

3.買主へ告知して売却できる
不具合が見つかった場合は、買主に告知してから売却することができます。
きちんと告知したうえで売却したのであれば売却後に責任の追及をされることがないので、売主側にはメリットとなります。

4.売主は建物の瑕疵を把握したうえで売却できる
建物の瑕疵について正確に把握することで売却前に補修をしたり、売却代金から補修費用を差し引いて売却するなどの方法を取ることができます。
売却後に瑕疵が判明した場合、買主とトラブルに発展することもあるのでそのリスクが抑えられます。

5.スムーズな売買につながる
買主が家の購入後に加入できる保険の中に既存住宅売買瑕疵保険というものがあります。
これはホームインスペクションを実施して既存住宅売買瑕疵保険の基準に合格していることが証明できれば買主が加入できる保険です。
既存住宅売買瑕疵保険に加入できると以下のようなメリットがあります。
・売買成立後に家の品質を欠くような修理が発生した場合補償金が出る(白アリ・雨漏り・床の腐食等)
・税金の優遇を受けることができる(不動産取得税・登録免許税・住宅ローンの控除)

既存住宅売買瑕疵保険に加入できることで買主にとって経済的な負担を減らせるという大きなメリットになります。

6.不動産会社が物件の状態を把握して取引をすることができる
インスペクションによって住宅の状態を把握して売買することができるので、取引後のクレームを抑えることができます。
中古住宅に対する安心感が高まれば購入を希望する買主も増えるので、不動産の売却市場の活性化つながります。


インスペクションのデメリット


1.ホームインスペクションは専門家によって細かな診断をしてもらう必要があるため費用がかかります。
また診断の結果、修理が必要と診断された場合は修理費用がかかることになります。
不具合が見つかった場合は補修しないと売りづらくなり、値下げの必要性が生じることもあります。

2.インスペクションの結果を正しく知らせてもらうことが必要となる。
診断業者の中には診断結果を依頼者に詳細に説明しないこともあります。

3.見つかった瑕疵の補修などをする必要がある。
瑕疵が見つかった場合売却前に補修する、若しくは売却代金から補修費用を差し引くなど補修費用をなんらかの形で負担しなければなりません。
またインスペクションを行ってもすべての瑕疵を発見できるとは限りませんので、のちにトラブルが起こる可能性があります。
また、発見された瑕疵の程度次第では売却ができなくなる可能性もあります。
そのようになった場合に備え既存住宅瑕疵保険に加入する方法があります。
※既存住宅瑕疵保険とは
中古住宅に欠陥が見つかった場合に補修費用等の保険金が支払われます。


ホームインスペクションの必要性


ホームインスペクションは不動産会社からの説明は義務化されていますが、ホームインスペクションを行う義務はありません。
売却するタイミングや状況によっては行わなくてもいい場合もあります。
築年数が長く品質を欠くような欠陥が見つかりそうな物件の場合は、ホームインスペクションを行う価値はあります。
反対に築年数が5年未満の築浅物件の場合は、欠陥が見つかることはほどんどないためホームインスペクションを実施しなくていいこともありますが、築年数だけで家の状態をすべて把握することは難しいです。


ホームインスペクションの流れ


インスペクションは不動産売却のほか、リフォームをするため、居住者が自宅の状態を知るため、保険に加入するためなどの理由で実施されます。

1.業者への問い合わせ・見積りを依頼する

2.申込をする
見積内容に納得できたら診断を実施する日程を決めて申込みをします。

3.必要書類の準備
インスペクションを受ける住宅の平面図や立体図などの書類を準備します。
・建物配置図
・外構図
・各階平面図
・立面図
・断面図
・建築確認申請書
・仕様書など

4.ホームインスペクションの実施

5.報告書を受け取る

6.料金の支払いをする




ホームインスペクションの診断内容


■外周りの状態
*基礎部分のひび割れ・欠損・水染みの跡がないか
*外壁塗装材表面のひび割れ・欠損・浮き・退色・こけ・腐食・剥がれなどないか
*屋根のひび割れ・欠損・剥がれ・ずれ・こけ・退色・浮きなどないか
*軒裏・バルコニー・外部金物など

■室内の状態
*壁や柱の仕上げ材表面のひび割れ・腐食・かび・水染み跡などないか
*壁や柱の著しい傾斜なないか
*床面のひび割れ・剥がれ・めくれ・腐食・かびなどないか
*歩行時に床面に著しい沈み・床鳴りなどないか
*床面に著しい傾斜なないか
*天井・階段・サッシ・ドア・シャッター・雨戸

■床下の状態
*土台および床組に、割れ・腐朽・水染み跡・湿り気などないか
*基礎および床下面にひび割れ・欠損・鉄筋の露出・木くずの堆積・防湿シートの隙間などないか
*束に緩み・浮き・蟻道と思われる付着物がないか

■小屋裏・天井裏の状態
*梁・桁・小屋組・野地板などに割れ・腐朽・虫食い跡・水染み跡・湿り気・金物の著しい不足や錆び・緩みなどないか
*各階の天井裏・小屋裏に割れ・腐朽・虫食い跡・水染み跡・湿り気・金物の著しい不足や錆び、緩みなどないか

■設備の状態
*給水設備で水の著しい変色・漏水がみられるか
*給湯設備に機器からの漏水など著しい劣化がみられるか
*排水管の状態
*換気設備の状態

※検査項目の一部となります。



検査で確認できる範囲


一般的にホームインスペクションで確認できるのは建物を解体せず目視や機械類によって計測できる範囲となり、屋根裏の診断を受けたい場合は追加料金が発生する場合もあります。
契約を結ぶ前にどこまで検査してもらえるのか、検査の範囲を必ず確認するようにしてください。


ホームインスペクションを実施する場合の注意点


1.下記2点をきちんと説明してくれる信頼できる業者を選びましょう。
・ホームインスペクションをどのように進めるのか
・各検査項目の目的と必要性

2.依頼する前に必要な書類を揃えておく
・建物配置図
・外構図
・各階平面図
・立面図
・断面図
・建築確認申請書
・仕様書など

3.売買契約締結をする前に検査を依頼する
予想外に大きな瑕疵があったり補修に多額に費用がかかったりすることなどが判明した場合は売買契約の前であれば購入をやめることができるので、正式に売買契約をする前に依頼することをおすすめします。


まとめ


建物の瑕疵を把握することにより、修復したり価格を下げて売却するなどの対応が可能となります。
瑕疵について知らないまま売却すると大きなトラブルに発展することもあるため、信頼できるインスペクション業者に依頼し、納得のいく診断結果を受取り必要があれば補修などの対処を行いましょう。
ホームインスペクションを受けることにより売主と買主の双方が、住宅の状態について正確に把握でき安心して取引ができます。


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