所有権よりも借地権の売却の方が売却の過程が複雑であり、特に地主との交渉が重要となるので、仲介を依頼して買主を探す場合は借地権の売却実績が豊富な不動産会社を選びましょう。
■借地権を売却したいことを地主に伝えておく
借地権を売却する際最も買取の優先順位が高いのは地主です。
第三者に土地の権利を譲渡するなら自分で買い受けたいと考える地主も多いので、借地権は地主に売却できるケースも少なくありません。
地主が買い取らないケースでも第三者に売却する際には地主の許可を得る必要があります。
予め地主に借地権を売却したいことを伝えておけばその後の交渉や売却活動をスムーズに進めやすくなります。
■地主との交渉は不動産会社を間に挟んで行う
借地権を売却する際には売却の承諾許可や承諾料、権利の売買、売却の方法などさまざまな交渉や地主との話し合いが必要になりますので、専門知識を持つプロに仲介を依頼すれば、借地人と地主の2者間で交渉を行うより公平性を保って話し合いを進めることが可能です。
地主が借地権の買受を申し出た場合にも単に土地を返すのではなく、あくまで権利の売買となるため地主へ返却するケースであっても不動産会社に仲介を依頼して売却価格や条件を事前に相談してから売買の交渉に進むのが望ましいといえます。
借地権の売却 6つのステップ
借地権を売却する際、買主となるのは地主か第三者のどちらかになります。
地主には優先的に借地権を買取る権利があり、交渉すれば地主が売却の相手となるケースが少なくありませんが、地主が購入を希望しない場合、借地人は地主の承諾を得て借地権を第三者に売却することになります。
通常の不動産売却のように第三者に借地権を売却する際には不動産会社に仲介を依頼して買主を探すのが一般的です。
≡ステップ①≡複数の不動産会社に査定を依頼する
借地権を売却を検討を始めたら先ずは複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
複数の不動産会社の査定結果をだしてもらうことで、所有する不動産のおおよその相場を把握することができます。
不動産会社により地域密着型の会社、特定の物件に特化した会社、実績豊富な大手の会社など強みはさまざまであり、不動産会社によって不動産の販路なども異なるため査定結果にも大きな差が出る場合があります。
より好条件で売却できそうな不動産会社を見つけるためにも複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
≡手順②≡不動産会社に仲介を依頼する
借地権を売却する場合も通常の不動産売却と同様に媒介契約を結びます。
媒介契約とは不動産仲介を依頼するときに、売主と不動産会社が交わす契約です。
*専属専任媒介契約
*専任媒介契約
*一般媒介契約
媒介契約には3種類ありますが、借地権の売却の場合は専属専任媒介契約か専任媒介契約を結ぶことをおすすめします。
専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合は不動産会社から定期的な売却活動の報告を受けることができ、また物件の情報をレインズに登録することが義務付けられています。
定期的な活動報告があれば売却活動が不透明になりにくく、物件の情報がレインズに掲載されれば売却のチャンスが増えます。
一般媒介契約の場合、不動産会社に定期的な活動報告を行ったり、物件情報をレインズに登録する義務はありません。また、複数の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことが可能ですが、複数の不動産会社との同時契約は釈件の売買をする際にはおすすめしません。
一般的な不動産売却とは異なり、借地権を売却する際には地主との交渉を行う必要があるので、地主への負担が大きくならないようにするためには借地権の売却を依頼するのは1社に絞りましょう。
≡手順③≡地主と交渉をして売却の承諾を得る
交渉の仕方や条件によっては地主からの承諾が得られなかったり、高額な承諾料を要求されたりするケースがあるので話し合いは慎重に行うようにしましょう。
地主との関係が良好であっても地主と交渉する際は専門知識があり、公平な立場から話し合いを進めてくれる仲介役が必要となるため、不動産会社を介して交渉することをおすすめします。
地主との交渉の際には売却の承諾だけではなく、譲渡承諾料の金額、売却後の建て替え、増築などの条件についても話し合っておくようにします。
譲渡承諾料については明確な取り決めはありませんが、借地権価格の10%程度が目安となります。
≡手順④≡不動産会社が売却活動を行う
地主の承諾を得たら不動産会社が売却活動を開始します。
近年ではインターネットを利用して物件を探すケースが主流となったためWeb上でのPRは売却活動に大きく影響します。
不動産ポータルサイトに物件情報を掲載したり、レインズへの不動産情報を登録したりといった売却活動を行います。
一般公開されている不動産ポータルサイトもあるので、自分の物件がどのようにPRされているのか確認しておくことも大切です。
≡手順⑤≡売主と買主で売買契約を結ぶ
借地権を売却する場合、売り主と買い主は「地主の文章による承諾を得る」という停止条件付きの売買契約を結びます。
借地権を売却する場合は地主が承諾した旨を記載した文書が必要です。
万一地主の承諾書を得られなかった場合は売買契約自体が白紙となります。
借地権を売却する際は売買契約を結んだ後に地主の承諾を得る必要があるため停止条件付きの契約となります。
契約に停止条件がある場合、契約が成立しても停止条件が成就するまで効力はありません。
地主からの承諾書を得るまでは売買契約が成立しないので仲介手数料は発生しません。
難しい手続きや書類の作成などは不動産会社の仕事ですが、売主自身も必ず契約書にしっかり目を通し、疑問点があれば確認してから署名捺印するようにしましょう。
≡手順⑥≡地主の合意を得て借地権譲渡承諾書を作成する
地主から借地譲渡承諾書を受け取ることで正式に契約が成立します。
借地権譲渡承諾書とは第三者への借地権の譲渡を承諾する際の正式な合意文書を指します。
売主と買主で交わした借地権の契約は地主の承諾を得るという停止条件付の売買契約となり、売買契約を結んでも停止条件を成就するまでは契約に効力はなく、地主から借地権譲渡承諾書を受け取ることで正式に売買契約が成立します。
*借地権譲渡承諾書*地主が借地人に対し第三者への借地権の譲渡を承諾する際、作成する正式な合意書を借地権譲渡承諾書をいいます。
借地権譲渡承諾書には譲渡の承諾だけではなく建て替えに関する条件など売却活動を始める前に地主と取り決めた承諾内容をまとめて記載します。
借地権譲渡承諾書を受け取ったタイミングで不動産会社に支払う仲介手数料が発生します。
≡手順⑦≡借地権を引き渡す
地主から借地権譲渡承諾書を受け取ったら売買契約および地主との譲渡条件に基づいて代金の決済や費用の清算などを行い買主に借地権を引渡します。
引渡しの手続きには、・代金の決済・必要書類の引渡し・建物の登記変更・不動産の状態の確認があります。
売却する借地に建物がある場合、借地権の譲渡に伴い、買主に建物の所有権が移るので建物の所有権移転登記を行う必要があります。
まとめ
借地権の種類には字条件と賃借権があり、借地人が持つ権利の強さがそれぞれ異なります。
地上権であれ所有権と同様に自由に売却できますが、借地権の種類が賃借権であれば売却するために地主の承諾を得なければなりません。
借地権の売却方法は4つあります。
①借地権を地主に売却する
②借地権を第三者に売却する
③等価交換を行い所有権にして第三者に売却する
④地主と協力して借地権と底地権を第三者に売却する
借地権を売却する際に地主が買受を申し出ることも少なくなく、また第三者に売却するする場合にも地主の協力を得られれば等価交換して所有権として売却したり、地主と取りの権利を同時に売却することもできます。
借地権の取り扱いは通常の不動産と比べ複雑であるため売却を成功させるためには信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。