遠隔地にある不動産を売却するときの注意点を解説します。

2024-04-16


相続などで取得した遠方にある不動産を売却するためには手間や時間を取らなければならず先送りにしているという方もいると思いますが、そのような状況が長引くのは望ましくありません。
なぜなら不動産を所有すると固定資産税などの税金が発生するため、売却が先になればなるほどその負担は大きくなります。
また、建物の劣化や土地の荒廃化も進むため周辺の安全面・治安面にも悪影響を及ぼすほか、売却するための改修および整備費用が大きくなってしまう可能性があります。
売却を考えているのであればできる限り早く手を付けることをおすすめします。
しかし、できる限り売却を進めたほうが望ましいとわかっていても現地に行けないため物理的に売却が困難と考える方もいると思いますが、現地に行かなくても売却する方法もあります。
通常の不動産売買契約は不動産会社に売却手続きを依頼し、売主と買主双方の立会いのもとで売買契約書に署名捺印を行い、手付金の受け渡しを行います。
基本的に買主、売主、仲介会社の三者立会いにより行われますが、現地での立会いができないケースもあります。
そうはいっても不動産会社の担当者と会うこともなく、現地の状況を確認することなく不動産会社に任せてしまうことは不安です。
当事者が現地へ行く以外に安心して遠方の不動産を売却する方法を解説します。


現地に行かずに遠方の不動産を売却する方法


◆持ち回り契約
売買契約書を三者間で郵送しあってやりとりする方法です。
売買契約は売主買主の双方および不動産会社(仲介会社)が同席して契約を交わすのが一般的ですが、持ち回り契約は不動産会社が売主および買主の双方のところに出向くか、郵送で契約書に署名捺印してもらい契約を締結します。
まず、不動産会社が契約書原本を作成して買主に郵送し、買主が署名捺印すると同時に手付金を所定の口座へ振り込んだ後、売主へ郵送します。
売主は契約書に署名捺印し、手付金が振り込まれていることを確認後、不動産会社または買主へ返送すれば売買契約が成立します。
遠方の不動産を売却するケースのほか、売主と買主のスケジュールが合わないケースなどでも活用される方法です。
持ち回り契約は便利ではありますが契約書を持ち回っている間に相手方の意向に変化が生じる可能性もあるので、それを回避するためにも速やかに買主から署名捺印をしてもらい、手付金の振込後に売主が契約書へ署名捺印をするという順で進めるようにします。
また、スピーディーに動いてくれ信頼できる不動産会社を選択することも重要なポイントとなります。
法律上の解釈では買主と売主がこの持ち回り契約の意味を共有・理解していれば有効であり、売主が契約書に署名捺印をして発送または不動産会社へ渡した時点で契約が成立します。
立会いせずに契約することに納得してくれる買主であれば、この方法により遠方へ出向くことなく売買契約を行うことができます。




◆代理契約(縁故者または知人に依頼する)
現地の近くに住んでいる親戚や出向くことが可能な距離に住んでいる知人などに不動産売買契約書の署名捺印を代理で依頼する方法です。
代理権を付与した代理人に署名代理という方法で売買契約を締結してもらう方法で、法律上は有効です。
代理人に不動産の売買契約手続きを依頼する場合には代理権委任状が必要です。
代理権とは法律行為の効果を本人に帰属させる代理人の地位をいいます。
代理人の行ったことは委任した本人が行ったのと同じ意味を持つということになるため、思わぬトラブルを回避するため親族や法律の専門家など信頼できる代理人を選任し、代理権の委任範囲を明確に記した委任状の作成を行うことが重要となります。
契約時のトラブルなど代理で署名した人の行為に対する責任は依頼した人が負うことになるので、依頼する人を慎重に選ぶ必要があります。

◆司法書士に依頼する
司法書士は専門的な法律の知識に基づいて不動産登記や契約書類の作成・提出を行います。
司法書士が代理で所有権移転登記をする場合は、直接面談のうえで不動産所有者の本人確認を行う必要があります。
また、司法書士は物件引渡し時にも立ち会うので実際に面談をした信頼できる司法書士に売買契約の代理権を付与することで遠方の不動産の売買契約を締結することができます。
不動産売買の手続きに慣れている信頼できる司法書士を選ぶ必要があり、司法書士との直接面談や契約締結時の旅費交通費、司法書士への報酬負担が必要となります。
手数料を支払う必要はありますが現地立会いなど不動産売買契約の一切を代理人として任せることができます。

※どの方法を選ぶにしても共通しているのは、不動産会社だけは自分で選ぶ必要があることです。
信頼できる不動産会社を探すことは遠方でも近場でも同じです。


遠方の不動産売却に必要な書類


遠方の不動産売却を依頼する際には以下の書類が必要になります。

・身分証明書:本人確認のため

・実印:売却する人(所有者)の実印
(土地を共有している場合には共有者全員分の実印が必要です)

・印鑑証明書:直近3ヶ月以内のものであること
(土地を共有している場合には共有者全員分の印鑑証明書が必要です)

・登記済み権利書(登記名義人となった申請者の「アラビア数字や記号の組み合わせからなる12桁の符号」)

・固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書

※どの不動産会社に依頼したとしても必須書類となります。


遠方の不動産を売却する流れ


1.売却の準備
売却を予定している不動産の価格査定は複数の仲介会社に依頼するようにしますが、査定価格が高いからという理由だけで安易に飛びつくことはやめましょう。
複数の査定価格を比較して相場感をつかみ具体的な根拠に基づいた査定価格を提示してくれる信頼度の高い不動産会社を選ぶようにしましょう。

2.媒介契約
査定を依頼し不動産会社を選んだら媒介契約を締結します。
媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約では買主を見つけるために売主が自ら動くことやほかの仲介会社に重ねて媒介を依頼することが認めれる一方、専任媒介契約と専属専任媒介契約ではいくつか制限があります。
専任媒介契約と専属専任媒介契約の契約期間は3ケ月以内と決められています。
どちらの媒介契約でも集客状況や検討者の有無、広告計画などについて一定期間ごとに売主に報告する義務があります。
ほかの不動産会社に重ねて依頼ができる一般媒介契約の場合、不動産会社には報告の義務がないため状況を把握しづらい可能性があります。
不動産会社は契約が成立しない限り報酬を得られないため、一般媒介契約では消極的な売り出しとなる可能性があるので、より積極的に売り出してもらうためにも専任媒介契約または専属専任媒介契約を検討することをおすすめします。

3.売却活動
査定価格を基にして売出し価格を決定したら不動産会社が売却活動を行います。
具体的には広告を出したり購入検討者に物件を紹介してもらったりします。
より早く買主を見つけたいという場合には別途広告費がかかる場合があります。



4.売買契約
売却活動により買主が決定したら売買契約の締結をします。この時買主には手付金の納付をしてもらいます。
売買契約締結の前には買主に対して重要事項説明が必要となります。
後々トラブルが発生することを避けるためにどのような内容を盛り込むのか、あらかじめ不動産会社と打ち合わせをしておきましょう。

5.決済・引渡し
売買契約締結後手付金を差し引いた残金の決済を行い、不動産の引渡し、所有権移転登記の手続きを行います。


遠方の不動産を売却する際の注意点


◆計画的に行う
土地や建物の利用予定がないのでそのうち売却できればいいという姿勢は不動産会社に伝わってしまうので、査定依頼から売却までどれくらいの期間で完了させるのか、売主として主体的にスケジュールを把握し売却を進めるようにしましょう。
なるべく密に連絡を取ってくれる営業担当者がいる不動産会社を選ぶことも重要です。

◆不動産会社は必ず会って決める
最も注意すべきことは売却する不動産会社は、必ず会って決めることです。
契約の手続きなどを行ってくれる不動産会社の担当者や代理人とはできれば現地へ行き顔を合わせておいた方がよいでしょう。
オンラインでも打ち合わせはできますが実際に対面することによって画面越しではわからないフィーリングなどが確認できます。
不動産会社と1回も会わないで売却しようとする方もいると思いますが、万一問題が起こった場合金銭的なダメージはかなり大きくなります。
必ず不動産会社に会って売却の話は進めるようにしましょう。
また、遠方の不動産売却というのは以下のような事例も考えられます。
例) 現在所有している不動産売却に目途がつかないうちに遠方に移転することになった。

管理できない不動産に固定資産税などのお金を支払うのはもったいないことなので、いち早く売却したいですが買い手がつかないと焦ります。
また、引っ越しなどで忙殺されていると、不動産会社とのやり取りも疎かになりがちで放置状態になってしまうこともあります。
かなりの時間が経過してから買い手がつくこともありますが、希望価格よりも安い価格で売ることになる可能性があること、そして遠方の不動産ですから、放置している期間中は生活上の不安材料にしかならないことは避けたいものです。
そのため、売却予定の不動産に関してはスピーディーに売却を行なうこと、かつ担当不動産業者とのやり取りを密にしておくことが重要です。
不動産会社の場合は売買契約時に必要な書類の手続きやどのようなスケジュールで行えばよいのか、親身でスピーディーに対応してくれる担当者かどうか、代理人であればまめに連絡が取れて信頼できる人かどうかなどをチェックしておきましょう。




遠隔地で不動産会社を選ぶポイント


◆大手が良いとは限らない
大手であれば安心とは限りません。
査定依頼の際は会社の規模にこだわらずに複数の不動産会社に査定依頼を出し、明確な根拠に基づいて真摯に対応してくれる会社を選ぶようにします。
一括して複数の不動産会社に査定依頼を行えるサイトもあるので活用するのも一案です。
地方では特に地元の不動産会社のほうが有益な情報を持っているケースもあり、また不動産会社によって得意とする分野やエリアは異なります。

◆現地の不動産会社に依頼する
いくら大手でも現地の情報に乏しくネットワークがない不動産会社では売却するまでに時間がかかってしまいます。
査定についても1社だけでなく、必ず複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。


◆専任媒介契約を結ぶ
不動産会社との媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約には報告の義務はありませんが、専任媒介契約には活動状況を報告する義務が発生するため遠方にいても動きを把握することができます。
専属専任媒介契約にしてしまうと自分が見つけた相手に売却するときも不動産会社を通す必要があるため、専任媒介契約が適しているといえます。

◆管理も引き受けてもらえることがある
不動産会社の中には売却までの間の不動産管理も引き受けてくれる所があります。
管理料は別途必要になりますが売却までに時間を要する可能性がある場合には、売却予定の不動産周辺の治安や安全への配慮、および物件の印象維持のためにも活用を検討することもおすすめです。




※現地に行かずに遠方の不動産を売却する方法を紹介しましたが、現地確認や鍵の引き渡しなどでどうしても一度は現地に出向く必要が出てくるケースがほとんどです。
そのタイミングで不動産会社の担当者と顔合わせしておくと、遠方の不動産でもスムーズに売却できる可能性が高まります。


まとめ


相続などにより遠方の不動産を所有することになったものの手間がかかるので売却を先送りにしている、いずれ戻るつもりでいたが状況が変わり住む予定がなくなったなどの理由により、空き家が年々増加している傾向になっています。
売却を先送りしているうちに所有している不動産が劣化・荒廃していってしまうほか、権利関係が複雑になってしまうこともあります。
いずれ売却を考えているという方は頻繁に現地に足を運ばなくても遠方の不動産を売却できる方法があることを知り、早めに対応することをおすすめします。


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