■住宅ローンを滞納していて競売にかけられる可能性がある
■住宅ローンが残っているが、病気やリストラ、離婚などの理由から今後払い続けることができない
■現在住宅ローンを滞納している
などの場合に債権者の同意を得て不動産を売却する方法です。
しかし、すでに競売が開始されている場合、連帯保証人や共同名義人の同意が得られない場合は任意売却することができません。
[売却に必要な条件]
・住宅ローンを滞納している、または今後の支払いが不可能と判断される
・住宅ローンを組んでいる金融機関など債権者の同意
・連帯保証人・共同名義人の同意
[売却時期]
状況に応じできるだけ早く
[売却期間]
通常3ケ月以内
[売却額]
売主だけで決めることはできない
債権者の同意が必要
[プライバシー保護]
十分に守られる
[引越し日]
ある程度自由に決めることができる
[諸費用の支払い]
債権者との話し合いにより売却代金から支払うことが可能
[債権者の同意]
住宅ローンを組んでから1~2年ほどしか経っていない、住宅ローンを返済できる能力があると判断された場合には債権者の同意は得られません。
あくまでどう頑張っても住宅ローンを支払うことが不可能である場合に、競売を避けるための最終手段として任意売却が用意されているのです。
任意売却ができると決まったら、任意売却を依頼する不動産会社と協力して販売活動を開始します。
インターネットや広告等を通じて広く販売活動ができるため、相場と同じくらいの価格で売却できる可能性があります。
売却して得た代金は住宅ローンの返済に充てられますが、残債がある場合には債権者との話し合いにより分割での返済が可能となる場合があります。
また、競売の場合は引越し日が強制的に決められてしまいますが、任意売却では売主の方である程度自由に決めることが可能です。
任意売却を利用すれば所有する不動産を少しでも高い価格で売却ができ、住宅ローンの返済に回せるだけでなく残債の返済方法についても柔軟に対応してもらえる可能性もあります。
通常売却とは住み替えや転勤、結婚などのライフスタイルの変化により、所有者の意志によって住宅を売却する方法です。
住宅ローンを完済できる資金がある、住宅ローンを完済しているという条件をクリアしているという点が任意売却との大きな違いです。
また、売主が納得するまで時間をかけて売却できると点も大きく異なります。
買主との交渉がまとまらなかったりした場合には、売らないということも売主側が自由に決定できますが、任意売却は短時間で売却しなければならないため売らないという選択肢は売主側にはありません。
引越しの時期なども考慮しながら計画的に売却活動が進められます。
競売とは既に住宅ローンを滞納している状況にあり、債権者の申し立てを受け裁判所を通じて住宅や土地を強制的に売却する方法です。
住宅ローンを組むときに金融機関などの債権者は不動産に対して抵当権を設定します。
抵当権とは債務不履行の場合、代わりに土地や建物を差し押さえすることができる権利です。
そのため住宅ローンを滞納し続けた場合債権者が抵当権を実行し、裁判所を通じて法的手段で土地や建物を競売にかけ負債の回収をします。
競売の場合は自宅に届く競売開始通知書に開始日や売却期間が記載されているので、それに従って強制的に売却されてしまいます。
[任意売却と競売の違いについて]
・強制的に実行させる
・入札式となっており、低価格で売却される可能性が高い
・入札開始日や終了日、引越し日が自動的に決められてしまう
・裁判所のサイトなどに競売物件として掲載されるので、周囲に知られる可能性がある
競売になる前に法的な手段を取らず、少しでも高い価格で売却できるようにするのが任意売却です。
[通常の不動産と同じように売却できる]
任意売却は通常の売却と変わらず時間をかけて多くの人に周知しながら販売活動をすることができるので、相場に近い価格で売却できる可能性があります。
[持ち出し金が不要]
任意売却は売却時にかかった費用や引越しまでに払わなければならない費用を売却して得た代金から支払うことが認められています。
・滞納分の固定資産税・住民税・・・売却代金から税務署へ支払う
・抵当権抹消費用・・・売却代金から司法書士へ支払う
・書類作成費用・・・売却代金から任意売却に必要な書類を作成してくれた人に支払う
・仲介手数料・・・売却代金から不動産会社へ支払う
*任意売却をしたいけれど費用が手元にないという場合でも安心して利用できるところも大きなメリットです。
[周囲に滞納等がばれずに開始できる]
任意売却は不動産会社を通じて通常売却と変わらない方法で売却活動をしていくので、住宅ローンを滞納している、何か理由があって任意売却をしているなど周囲にばれることはありません。
競売になってしまうと裁判所のホームページや新聞に競売情報として住所が掲載されてしまうので、周囲にばれてしまうことがあります。
近隣のひとや知人に知られることなく売却活動を進められるのは任意売却の魅力です。
[話し合いにより残債を分割返済することが可能]
任意売却をしても残債が残る場合、金融機関や住宅金融支援機構と相談して無理のない範囲での返済が可能です。
月々5,000円~30,000円程度で設定する場合が多いので、やりくり可能な道が開けます。
[売却代金から引越し代を払えることがある]
任意売却は引越し日を話し合いで決められるだけでなく、場合によっては売却代金の中から引越しにかかる費用を出せることもあります。
ただし、債権者の義務ではなく、あくまで債権者との交渉によって可能となります。
現在の家にそのまま住み続けられることも可能
事情があって家を手放すことになった場合、できることならそのまま住み続けたいと思う人も多いと思います。
任意売却は購入者を選ぶことができるので身内や投資家に購入してもらえれば、家賃を払うことによって賃貸として住み続けられるリースバックという方法も可能です。
任意売却のデメリット
[手続きが大変]
任意売却を始めるには、金融機関など債権者の同意を得る、売却する建物に連帯保証人や共有名義人がいる場合には相手の同意を得ることが必要なためそれに伴う手続きの調整や準備が大変です。
短期間でやらなければならないため大きな負担ともなります。
任意売却ができることになった場合は、法律に係わる側面も多く判断が難しいこともあるので、弁護士や税理士、任意売却を専門としている団体などと相談をしながら進める方法もあります。
[売却したお金は手元に残らない]
任意売却では売却したお金は全額住宅ローンの返済に充てなければならないため、余剰が出ない限り自由に使えるお金は残りません。
任意売却をしても住宅ローンの全額返済が難しい場合は債権者と話し合い、返済が終わるまで毎月一定額を返済していく必要があります。
[信用情報に傷がつく]
事故情報としてブラックリストに載ってしまうため、一定期間新たにローンを組んだり、クレジットカードを作成したりすることは難しくなります。
住宅ローンを滞納することはリスクが高いので、住宅ローンの支払いが難しい状況になったら早めに手を打つことが大切です。
[期限の利益の喪失予告が届いた]
住宅ローンの支払いが3ケ月滞ると、債権者から滞納している住宅ローン利息を期日までに支払わないと、住宅ローンを分割返済する権利を失うという期限の利益の喪失予告が届きます。
支払が難しい場合、住宅ローン残高の一括返済を求められます。
一括返済ができない場合は、競売へと話しが進んでしまいます。
事態が深刻化してしまう前に、期限の利益の喪失予告が届いた時点で任意売却を検討するようにしましょう。
[病気やリストラなどで住宅ローンを払える目処が立たない]
住宅ローンの滞納がなくても、病気や災害などで住宅ローンを払う余裕がない、リストラや大幅な給与ダウンにより今後支払うことが難しい、今まで共働きだったがどちらかが働けなくなり住宅ローンの返済ができないなど、急な環境の変化や状況の変化により住宅ローンの支払いが困難になるケースがあります。
支払いをせず放置したままにしておくといずれ期限の利益の喪失予告や競売開始通知書が届くことになります。
3~6ケ月住宅ローンを滞納すると任意売却が認められるケースがあるので、督促や勧告が届いていなくても任意売却を検討する価値はあります。
払える見通しが立たない場合は早めに任意売却の相談をすることをおすすめします。
[住宅の資産が下がっているのに高額な住宅ローンが残っている]
購入時より住宅の資産価値が大幅に下がっていて、高額な住宅ローンが残ってしまい支払いが難しくなった場合も任意売却が認められることがあります。
競売になってしまうと任意売却よりもさらに安い価格で売却されてしまい手元に膨大な残債が残ってしまうので、住宅ローンの支払いが難しくなってきたという場合は、滞納する前に資産価値を調べてみた上で任意売却を検討することをおすすめします。
[離婚時に家を処分したいとき]
離婚をするときに大きな問題となるのがマイホームです。
離婚の際に任意売却をして売却したお金で残っている住宅ローンの返済に充てるという人も増えています。
[裁判所から競売開始通知書が届いた]
裁判所から競売の改札日と終了時期などが記載された競売開始通知書が届き、改札日が来ると競売が開始されてしまいます。
競売開始通知書が届いても改札日までに任意売却が完了すれば問題ありません。
そのまま放置した場合は競売が開始されてしまいます。
任意売却ができないケース
[すでに競売が開始されている]
法的には競売の改札日の前日までなら競売の取り下げが可能ですが、その時点で金融機関などの債権者が任意売却に応じる可能性は低いといえます。
競売開始通知書が届いた時点ではまだ任意売却に向けて動くことができますが、競売が開始されてしまうと厳しくなるので早めに相談をすることが大切です。
[不動産の所有者でない場合]
不動産登記法により不動産取引をする場合は、売主の本人確認情報を明示することが定められているため、任意売却ができるのは不動産の所有者のみとなっています。
所有者に連帯保証人がいる場合は連帯保証人の同意も必要です。
また共有名義の場合は双方の同意がないと任意売却は認められません。
連帯保証人の同意が得られない、共有名義人の同意が得られないという場合は任意売却はできません。
[債権者の同意が得られない]
住宅ローンを組んでいる金融機関や住宅支援機構など債権者の同意が得られない場合、任意売却の許可は下りません。
同意が得られない理由としては、住宅ローンを組んでからまだ1年~2年ほどしか経っていない、債権者との関係が悪化している、住宅ローンを返済できる能力があるなどがあります。
[物件の情報開示に同意できない]
任意売却は通常の売却と同じ方法で売却活動をします。
そのためには情報の開示や内覧の対応をしなければならないため、売却活動に協力できない場合任意売却は難しくなります。
任意売却をするためには売り手側の協力が欠かせません。
[税金を滞納している]
多額の納税を滞納している場合は任意売却ができないことがあるので、分納にしたり売却代金から支払うようにするなど役所と話し合いをして、支払の目処を立てなければなりません。
納税の滞納があっても役所と話し合い、折り合いがつけば任意売却ができる可能性はあります。
任意売却の流れ
任意売却はひとりひとりのケースに合わせて臨機応変に対応するため手順が異なります。
[一般的な流れ]
①任意売却の相談をする
任意売却の手続きは所有者個人でもできますが、限られた時間の中で手続きすることは大変なので、任意売却を扱っている弁護士や不動産会社に相談することをおすすめします。
・住宅ローンをどれくらい滞納しているのか
・督促状など届いているか
・住宅ローン以外に税金やほかのローンなど滞納しているものはないか
・住宅ローンの残債や現状の資金繰りについて
・住宅ローンの支払いが難しくなった理由などを、専門家に相談することにより任意売却がベストな手段なのかなど確認することが可能です。
②建物の価格を査定する
不動産会社に依頼して売却をする建物を査定してもらうことにより、現状どれくらいの価値があるのかを知ることができるので、任意売却をするとどれくらい返済できるのか把握することができます。
任意売却の販売価格は債権者にも決定権があります。
通常の売却では売主が販売価格を決めますが、適正な価格で売却できないと住宅ローンの返済に支障がでるため、任意売却の場合は債権者にも決定権があります。
不動産会社との話し合いにより販売価格を決定しても、債権者が異なる金額を提示した場合は双方で話し合いの上決定する必要があるので、査定価格がそのまま売却価格に反映されない可能性があります。
③媒介契約を締結する
不動産会社に売却の仲介を依頼する場合媒介契約を結びます。
媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
任意売却の場合、金融機関や役所などの他の機関とやり取りすることが多いので効率よく進めるために専任媒介契約または専属専任媒介契約を交わすのが一般的です。
④債権者との交渉
債権者の同意が得られないと販売活動に進めません。
任意売却後に残債が残る見通しがある場合はその返済方法も話し合う必要があります。
⑤販売活動をする
任意売却に向けて販売活動を開始します。
売却方法は通常の売却と同じです。
インターネットや広告などを通じて買い手を見つけます。
競売の可能性が迫っている場合や、督促状などが届いている場合はできる限り早期での売却が望まれるため、残された期日を確認しながら売却活動を進めていく必要があります。
⑥売買契約の締結
購入者が決定したら債権者の同意を得たうえで売買契約を締結します。
引越しの時期や清算方法などトラブルにならないように注意しましょう。
売却代金から住宅ローン、仲介手数料などの支払いをします。
任意売却をしても残債がある場合は、債権者との話し合いにより毎月決めた金額を支払うようにします。
⑦引越し
決められた期日までに引越しをします。
引越し費用の捻出が難しい場合は売却費用から出してもらえることがあります。
事前に相談しておくと良いでしょう。
*自己破産の申請中でも任意売却をすることは可能です。
自己破産をする人が不動産を所有している場合は競売か任意売却で処分することになります。
*販売活動をしても期間内に売却できない場合もあります。
その場合任意売却は不成立となり競売に移行するケースもあります。
*財産の差し押さえに入っている場合は、先ず差し押さえを解除する必要があります。
役所などとの話し合いにより解錠することができれば任意売却を検討することは可能です。
任意売却を検討すべきか判断に迷った場合、先ずは信頼できる不動産会社へ相談することをおすすめします。